IBMは400億円を蒸発させ、Blockは半数の社員を解雇したにもかかわらず株価は反発:AI時代において、どの資産がトークン化に値するのか?

2026年2月23日、平穏なはずだった月曜日に、IBMの株価は2000年10月以来最も激しい一日暴落を記録した。終値では13.2%の下落となり、数時間で約400億ドルの時価総額が蒸発した。引き金は決算発表の失敗や規制の重圧ではなく、製品発表だった:AI新興企業Anthropicが発表したClaude Codeツールは、IBMシステム上で動作するCOBOLプログラムの現代化を可能にするとし、COBOLはまさにIBMの利益を支える「堀」事業だった。

三日後、同じような出来事が全く逆の形で起こった。2月26日、Jack Dorsey率いるフィンテック企業Blockは約4000人の人員削減を発表し、削減比率はほぼ50%だった。理由は同じくAIによる効率向上だったが、市場の反応は全く異なった—Blockの株価はアフターマーケットで一時24%以上上昇した。Dorseyは株主宛ての手紙でこう述べた:「今後1年以内に、多くの企業が同じ結論に達し、類似の構造改革を行うと信じている。」

この二つの出来事、共通の推進要因はAIだが、市場の反応は大きく異なる。暴落と暴騰、その背後で何が起きているのか?答えは、より深い命題に向かうかもしれない:AIは「何が価値ある資産か」を再定義しつつある。上場企業の経営者、投資家、伝統的な意思決定者にとって、この再評価の論理を理解することは、もはや先見の戦略ではなく、生き残りをかけた緊急の課題となっている。

一、同じAIでも、市場の判断は真逆

これら二つの事件の差異を理解するには、それぞれの資産構造をまず把握する必要がある。

IBMの株価暴落は、表面上はClaude Codeツールの技術的脅威に見えるが、実際には市場がそのコア資産モデルの再評価を行った結果だ。COBOLは1950年代末に誕生したプログラミング言語であり、今も世界のATM取引の約95%や、多くの金融、航空、政府などの重要システムを支えている。Anthropicはブログでこう述べている:「毎日、数千億行のCOBOLコードが本番環境で稼働し、重要なシステムを支えている。それにもかかわらず、COBOLを理解する人は年々減少している。」

長年、COBOLシステムの現代化は複雑かつコスト高な工程であり、これがIBMの利益を支える堀だった。しかしAnthropicは、「AIの力を借りれば、チームは数年を要さず、数シーズンの期間でCOBOLコードベースを現代化できる」と主張している。市場が受け取った潜在的な意味は、:IBMが依存する人手集約型のシステム維持収入やメインフレームに関わるサービス収入が、AI技術によって侵食されつつあるということだ。

しかし、興味深いことに、IBMの株価は翌日には2.68%反発した。ウォール街の分析機関WedbushやEvercore ISIは迅速にコメントし、「今回の暴落は根拠のない過剰反応だ」と弁護した。彼らの理由は核心を突いている:企業顧客は、新たなAIツールがレガシーコードを翻訳できるからといって、すぐにメインフレームシステムを放棄することはない。コードの文法翻訳と、ハードウェア・ソフトウェアの深い統合によるシステムの現代化には大きなギャップが存在する。

IBMも同日、回答を出し、重要な論点を提示した:現代化の課題はCOBOL言語の問題ではなく、IBM Zプラットフォームの問題だと。コードの翻訳は実際の複雑性をほとんど捉えられず、その価値は数十年にわたるソフト・ハードの統合に由来している。これをコード翻訳だけで移行することはできない。

一方、Blockのケースも同じく大規模な人員削減だが、市場の評価は24%の上昇だった。ポイントは、Blockの資産構造が変化しつつあることだ。2024年以来、Blockは事業モデルと人員配置の再編を進め、AIツールへの投資も積極的に行っている。自社開発のAIツール「Goose」もその一例だ。

BlockのCFO、Amrita Ahujaは、削減の理由をこう説明した:「大胆かつ決断的な行動を取っているが、我々は堅実な基盤の上に立っている」。この「堅実な基盤」とは、2025年の通年毛利益が10億3600万ドルに達し、前年比17%増となった実績を指す。堅調な財務実績が、大規模な再編を進める余裕を生んでいる。

市場の解釈は明快だ:BlockはAIの衝撃に受動的に縮小しているのではなく、積極的に資産構造を最適化している—少ない「人的資産」でより高い「技術資産」の生産性を追求しているのだ。50%の人員削減とともに、年間指針を引き上げたことは、AIによって一人当たりの価値が拡大していることを示している。

二、AI時代における四つの資産の再評価

この二つのケースは、進行中のトレンドを示している:AIは資産の「再定価器」として働き始めている。異なるタイプの資産は、AIの評価枠組みの下で、まったく異なる価値曲線を描いている。

第一は、人力資本集約型資産だ。IBMのCOBOL保守チームや伝統的なアナリスト、プログラマーなど「情報処理者」の価値は、AIによって希薄化されつつある。AnthropicはClaude Codeの紹介で、「人間の分析者が数か月かかるリスクを識別できる」と述べている。これは、人間の重要性がなくなるという意味ではなく、情報の非対称性やプロセス知識に依存する仕事の価値が、技術によって圧縮されていることを示す。

ただし、注意すべきは、AIが代替するのは「情報処理」であって、「価値創造」ではない点だ。Futurum GroupのアナリストMitch Ashleyは、COBOLの現代化には、事業範囲の定義、技術評価、データ移行計画、行動の等価性検証、可観測性、組織変革管理など多重の側面が必要であり、コード翻訳はその一部に過ぎないと指摘している。複雑なシステムを操り、ビジネスの本質を理解し、戦略的判断を下せる人間の能力は依然として希少だ。

第二は、データ資産だ。生成型AIの急速な発展により、データの価値属性は再構築されつつある。Tangらの研究(『PLOS One』)は、生成型AIがデータの取得、処理、利用方法を変え、データ資産の価値はその内在的な質や関連性だけでなく、生成型AIの枠組み内での応用シナリオ、変換能力、市場需要とも密接に関係していると指摘している。

これにより、データの独自性、連続性、ガバナンス性がコアな価値次元となる。あるシナリオでは高価値なデータセットも、別のシナリオでは全く役に立たないこともある。AIモデルの訓練に唯一無二の高品質データを提供できる企業は、新たな価格設定権を獲得している。

第三は、アルゴリズムとモデル資産だ。OpenAIとParadigmの共同開発したEVMbenchは、AIがスマートコントラクトの脆弱性を検出・修復・利用する能力を評価するものであり、アルゴリズムが可量化の対象となる資産へと進化していることを示している。モデルの重みやアルゴリズムの枠組み、訓練手法も、識別・制御・貨幣化可能な無形資産となりつつある。

第四は、伝統的な有形資産だ。これらは分化の過程にある。情報の非対称性や人力仲介に依存する資産は価値が下落しやすい一方、エネルギー施設や希少資源、コアインフラのような「AI代替抵抗性」を持つ実体資産は、相対的に価値を保つ。理由は簡単で、AIはこれらの資産の運用を分析・最適化できるが、その物理的存在や価値担保機能を代替できないからだ。

三、資産の再評価から「AI免疫」へ

これらの分析を踏まえ、企業は自社資産がAI時代において価値を増すのか、下落するのかを判断する体系的な枠組みを必要とする。RWA研究院は「AI免疫」資産識別フレームワークを提案し、三つの核心的特徴を示している。

第一は、非コード化性だ。これは、AIが完全に学習・複製できない価値要素を指す。COBOLコード自体はAIで翻訳可能だが、IBM Zシリーズの大型機の取引処理能力、量子安全暗号、8つの9の信頼性といった要素は、AIツールでは再現できない。Futurum Groupの研究は、「コード翻訳は実際の複雑性を捕らえきれず、プラットフォームの価値は数十年のソフト・ハードの統合に由来する」と指摘している。同様に、オフラインのシナリオ制御、暗黙の業界知識、複雑な関係ネットワークなど、「コード化」しにくい要素は、資産の第一の免疫バリアを構成している。

第二は、データの堀だ。企業が独自かつ継続的に管理できるデータ資産を持つかどうかだ。公開データだけを使うのか、それとも他者が入手できない独自データを生成できるのか。中信銀行は、巨大モデルを用いたデータ資産評価や、「データ資産の表記」も模索している。AI時代において、データは単なる生産原料ではなく、資産そのものとなる。ただし、すべてのデータが資産になり得るわけではなく、継続的に生成され、権利が確定でき、検証可能なデータだけがトークン化の土台となる。

第三は、AIによる弾力性だ。資産自体がAIによって強化され、代替されないかどうかだ。これが、IBMのような衝撃とBlockのような変革を区別する重要なポイントだ。IBMのコア事業—COBOLレガシーシステムの維持—はAIに「代替」される対象だが、Blockのビジネスモデル—決済や金融サービス—はAIによる「付加」可能な資産だ。実際、IBMは「watsonx Code Assistant for Z」を開発し、顧客が安全にレガシーコードを再構築・現代化できるプラットフォームを提供している。資産がAIと協働し、対立しない場合、その価値は増大する。

逆に、AIに脆弱な資産は、次の三つの特徴を持つ:情報処理に依存、標準化・自動化に置き換えやすい、データ生成・蓄積能力がない。これらを踏まえ、自社の資産ポートフォリオに対して「ストレステスト」を行うことができる。

四、RWAの新たな機会:何をトークン化すべきか?

上記のフレームワークをRWA(現実世界資産のトークン化)分野に適用すると、明確な結論が導き出せる:RWAは「すべての資産をブロックチェーンに載せる」ことではなく、AIの再評価の大潮の中で、硬い資産の中からAIサイクルを超えて価値を維持できるものを選別することだ。

2026年3月、オンチェーンのRWA総価値は250億ドルを突破し、1年前と比べて約4倍に増加した。しかし、香港Web3.0標準化協会が2025年8月に発表したRWA産業白書では、「万物皆RWAは誤った命題だ」と明言している。規模化を成功させる資産は、価値の安定性、法的権利の明確さ、オフチェーンのデータの検証性という三つのハードルをクリアしなければならない。

「AI免疫」フレームワークを踏まえ、さらに細かく分類すると、トークン化に適した資産は、まずAIの再評価において価値が安定している資産だ。

第一は、「AI免疫」特性を持つ実体資産だ。エネルギー資産、インフラ、希少資源などが該当し、これらの価値は情報処理に依存せず、物理的存在と実用性に由来する。白書で挙げられる新エネルギーRWA(充電スタンドや太陽光発電資産)、GPUなどの計算資源もこの範疇だ。特にGPUは、AI産業の「硬い需要」と信頼できる「デジタル遺伝子」により、RWAの理想的なアンカー資産となっている。

第二は、プログラム可能なデータ資産だ。独自データ源を持ち、スマートコントラクトを通じて自動的に収益化できる資産は、「データの堀」と「AI付加の弾力性」を兼ね備える。白書では、データと知的財産権、カーボンクレジットなどを無形資産に分類している。ただし、すべてのデータが資産になり得るわけではなく、継続的に生成され、権利が確定でき、検証可能なデータだけがトークン化の土台となる。

第三は、ハイブリッド資産だ。物理的なコントロール権とデジタルの権益を組み合わせたものだ。例として、商業不動産の所有権をトークン化することは可能だが、実際の運営や管理、賃貸といったオフラインのコントロールは、依然として専門機関の手にある。この「物理+デジタル」の二層構造は、ブロックチェーンの流動性と、「AI免疫」のオフライン価値の両方を活用できる。

逆に、AI時代に慎重に扱うべき資産も二つある。一つは、人力仲介に依存しすぎる金融資産で、その価値はAIによって圧縮されやすい。もう一つは、データの堀がなく、標準化・自動化された資産で、AIの評価枠組みでは議論の余地が少ない。

五、行動指針:認識から意思決定へ

IBMの400億円蒸発は、一つの時代のシグナルだ—情報の非対称性と人力の積み重ねに依存する資産は、AIによって再評価されつつある。一方、Blockの逆行は、もう一つの時代の合図だ—AIを受け入れ、資産構造を最適化できる企業は、市場からの再評価を受けている。

上場企業や伝統的企業の経営者にとって、これは単なる技術的な不安ではなく、資産価値体系の根本的な再構築だ。CEOは避けて通れない問いに答える必要がある:私の資産ポートフォリオは、AIの目にはいくらの価値があるのか?

本稿の分析を踏まえ、三つの具体的な行動提案を示す。

第一、即座に資産の「AIストレステスト」を開始せよ。「AI免疫」フレームワークの三つの特徴—非コード化性、データの堀、AI付加の弾力性—を用いて、コア事業を逐一評価し、AI衝撃下で価値が縮小しやすい事業と、逆にAIの恩恵を受けやすい事業を識別せよ。

第二、動的な資産ポートフォリオ管理体制を構築せよ。AIの再評価を背景に、資産配分はもはや「買って持ち続ける」静的戦略ではない。意識的に「AI免疫」資産の比率を高め、AIに脆弱な資産には転換や売却の計画を立てよ。これは財務だけでなく、戦略、技術、事業の連携も必要だ。

第三、RWA戦略を見直せ。資産のトークン化を考える前に、「AI免疫」フレームワークを用いて、基盤資産を選別せよ。RWAの本質的価値は、「上場」そのものではなく、トークン化による流動性と価格効率の向上にある。もし基盤資産がAI時代に価値を下げるものであれば、トークン化は価値喪失を加速させるだけだ。

最後に、特に注意すべきは、中国の八部門連合が2023年に公布した42号文書により、中国本土内でのあらゆる形態のトークン発行やトークン化取引は厳禁とされていることだ。本稿で議論したRWAのトークン化は、あくまで海外の規制枠組み内での資産デジタル化の実践に過ぎない。企業は、関連事業を展開する際には、「国内禁止、海外登録」の規制線を厳守しなければならない。

AIが資産の価格付けを始める今、唯一の安心は、AIが定価できないもの—それはコードでもデータでもなく、人間の価値判断そのものである。

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